うつ自殺、名古屋高裁、自殺原因と逆転認定
愛知県豊川市の職員、児童課長だった堀照伸さん(当時55)がうつ病を発症して自殺したのは職場環境が原因だったとして民間企業の労災に相当する公務災害の認定を求めた訴訟の控訴審判決が21日、名古屋高裁(高田健一裁判長)でありました。裁判長は、上司による堀さんの部下へのパワーハラスメントを自殺の原因として認定、公務外災害として訴えを棄却した一審・名古屋地裁判決を取り消し、公務災害と認めました。原告が逆転勝訴しました。
判決は、堀さんは過重な業務に加えて、上司の部長が堀さんの「部下の職員ら」に対して、「人前で感情的、攻撃的に部下をしっ責する指導」など、典型的なパワーハラスメントと認められる指導を繰り返したことが負担となってうつ病を発症したと指摘。発症後も多忙が重なり、病状を悪化させて、自殺したと結論づけました。
遺族側弁護士によると、堀さんの部下という第三者へのパワハラに対し「堀さんが自分のこととして責任を感じ、心理的負担を受けたと推認できる」と自殺の一要因として認められた判決は異例といいます。
判決によると、堀さんは2002年4月に同市児童課長に就きました。同課は当時、少子化対策や児童虐待、子育て支援など多岐にわたる業務を担当。同基金側は、堀さんの時間外労働は公務災害の認定基準である月35時間を下回っており、勤務は過重でないと主張しましたが、高田裁判長は「心理的負担が否定されるわけではない。初めて福祉部門に配属された堀さんにとっては仕事も難しかった」としました。
部長はフロア全体に響く声で部下をしばしば怒鳴り、過去には「このままでは自殺者が出る」として人事課に訴え出た職員もいたといいます。児童課長就任約2カ月後の同年5月、堀さんはうつ病を発症し自殺しました。
同年11月、遺族は地方公務員災害補償基金愛知県支部へ公務災害の認定を請求しましたが、死亡は「公務外」とした。高裁判決を受けて被告側の同支部は「判決内容を検討した上で本部と協議したい」とコメント。一方、豊川市は「現時点では何も答えられない」(人事課)とコメントしました。
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