労使の利益が相反する有給休暇

aiai_mc

2008年11月03日 19:32

小規模事業所の就業規則を作成していると必ずぶち当たる壁が年次有給休暇です。

入社半年で10日間、
以後、11日、12日、14日、16日、18日、20日と増えていきます。

今年使い切れなかった有給休暇は翌年に限り繰り越すことができます。
有給休暇の時効は2年間です。

ある程度勤続年数が長くなると40日間有給休暇を保有しているという従業員の方もいますね。

労働基準法では、正社員だけではなく、雇用されている身分にかかわらず、条件を満たせば年次有給休暇を与えなければならないと決められています。
経営者の方はよく勘違いされていますが、パートタイマーやアルバイトなども条件を満たせば同様です。

年次有給休暇は、その名のとおり、働かなくても給与を支払わなければなりません。
正社員であれば、通常出勤したものとみなして欠勤控除を行ないません。
パートタイマーの時間給者は、契約している時間分の時間給で支給します。

ここのところに抵抗を感じてしまう経営者の方は多いです。
「なんで、休んでるのに給料支払わなければならないのか?」
「通常の休日とは別に最大20日間も年間に休みを与えなければならないのか?」
そういった声をよく聞きます。

昭和62年までは労働基準法で定められていた労働時間は週48時間でした。
単純計算で今より、年間で50日以上休日が少なかった計算になります。

現在は、労働時間週40時間をクリアするためには、1日8時間勤務の場合、105日の休日が必要です。
更に年次有給休暇がプラスされ、会社によっては慶弔休暇も別枠で有給休暇でお休みできるところもあります。全部フルに休むとかなりの日数です。
ギリギリの人数で業務を回している中小企業では、有給休暇を使われたら困ると経営者の方がおっしゃる気持ちも
良くわかります。

一方、従業員の側からすると有給休暇を使用するのは、当然の権利です。
「法律で決められている権利を行使するのは当たり前のこと、それを守らない会社がおかしい!!」
有給休暇を使えないことなどに不満を持つ従業員の方は非常に多いです。

会社側⇒有給休暇はなるべく使ってほしくない。
従業員⇒有給休暇は当然の権利だから、出来れば使い切りたい。

立場が変われば、利益は相反します。

従業員側の主張で多い内容とそれに対する法律的な見解をまとめてみました。

①年次有給休暇の残日数をきちんと明示してほしい
 ~法律上特に決まりごとはありませんが、明示した方が望ましいでしょう。

②忙しくて有給をとることができないから買い上げてほしい
 ~在職中の有給の買上げは禁止されています。

③欠勤した場合、有給休暇と振り替えてほしい
 ~会社は特に欠勤との振替をしなければならないという法律はありません。会社の判断で出来る部分です。

④通院や子供の参観日等に参加するために、半日単位で有給をとりたい
 ~法律では決められていません。会社の判断で半日単位の付与ができます。

⑤会社の研修に有給を使用しないでほしい
 ~業務命令として参加させる研修の場合は、出勤扱いで参加させるべきでしょう。
  ただし、自己啓発的な内容や、業務命令でないものは、有給休暇でも構いません。

⑥有給を使用したことで皆勤手当等不利益な取り扱いをしないでほしい
 ~労働基準法では、有給休暇を使用したことにより、皆勤手当を支給しないなどの取扱いをすることは原則禁止されています。
 
 などです。


労使で利益が相反する有給休暇がですが、それに対する有効な解決策をもっていないのが、現実です。

週40時間をクリアして、なお、ある程度休日が多い会社は、休日を週40時間をクリアするだけの日数まで減らして、
残りを有給休暇の計画付与を使うという方法もあります。
有給休暇の計画付与とは、各自が持っている有給休暇の5日を上回る部分を会社が日にちを指定することができるものです。
例えば、年末年始の休み、お盆休みなどを指定して一斉に有給休暇を消化してもらうのです。
各自の有給休暇の消化の促進ができますので、もともとお休みが多い会社などでは、上手く利用してみるとよいと思います。

ただし、本当に困っているのは、通常の休日も休めない、有給休暇どころではない。という会社です。

売上や成果や成績等に影響ないのであれば、従業員同士で協力して都合を付け合って有給を取れるようにするという体制をつくってみるのはどうでしょうか?

過去に、有給休暇が取得できなくて不満をもったパートタイマーの方が労働基準監督署に申告をして調査が入ってしまったという事例も体験しました。

「有給休暇なんて与えられないよ」とおっしゃる気持ちは本当によくわかりますが、従業員の方が不満に感じやすい部分ですし、モチベーションが下がりやすい部分でもあります。

従業員のモチベーション低下や労使間のトラブルを防ぐためにも「有給休暇なんて与えることはできない!!」という状態から、少しずつでも改善できるように前向きに取り組んでみる必要があると思います。


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