会社と従業員の間でトラブルになった場合、従業員の方が労働基準監督署に駆け込むというのが一般的なイメージとしてあると思います。
労働基準監督署の監督官は特別司法警察官で、強制的に調査をする権限などを持っています。
残業代不払いなどで、従業員が申告をした場合、会社は調査に入られ、「是正勧告」を受けることになります。
ただし、労働基準監督署が関与できるのは、労働基準法に違反する場合です。
それ以外の解雇が不当であるか?賃金の不利益変更などについては、民事の範疇となり、労基署では取扱いません。
民事の個別労働関係紛争解決については、次の3つの機関で対応しています。
1.総合労働相談
各労基署の中に設置されていたり、主要都市の駅の近くにあり、労働問題に関するトラブルの相談窓口となっている。
この総合労働相談では、相談者の話を聞くなかで、労基署で取り扱う範疇なのか、民事の問題なのか、振り分けをする役割を担っている。
2.都道府県労働局長の助言・指導・勧告
実際に紛争状態にある方々に個別労働関係紛争の問題点と解決の方向を都道府県労働局長がアドバイスする制度この制度は、紛争の当事者に一定の措置の実施を強制するものではない。
3.労働局のあっせん
労働問題に関して争いになっている状態の当事者の間に第三者である「あっせん員」が入り、労働者側、雇う側の主張の要点を確かめ、双方に働きかけ、場合によっては両者が採るべき具体的なあっせん案を提示するなど、紛争当事者間の話し合いを促進することによりその自主的な解決を促進する制度。裁判所における訴訟のような白黒をはっきりつけるというような制度というよりは話合いを重視する調停のような制度。
この中で「あっせん」についてもう少し詳しく説明すると
◆あっせんのメリット
・裁判に比べ、手続が迅速かつ簡便。
・費用がかからない(専門家への依頼などの実費は除く)。
・手続は非公開であり、紛争当事者のプライバシーが保護される。
◆あっせんのデメリット
・あっせんへの参加には強制力はないため相手方へ無視されたら手続が進まない。
・参加したとしても、相手方が要求を飲むか飲まないか自由で強制力が無い。
費用や時間がかかる裁判をするまでではないが、アクションを起こして何らかの解決を図りたいという場合にこの「あっせん」の制度を利用するケースが増えてきています。
「あっせん」に持ち込まれる事案で圧倒的に多いのが「解雇」に関する件です。
近年、労働局のあっせんの利用件数は右肩あがりで増加しています。
会社側としては、「あっせん」に持ち込まれた場合、出来るだけ応じた方が得策ではないかと思います。会社が考える金額での金銭解決であっせんが成立すれば、裁判に持ち込まれるよりも金銭的にも時間的にもメリットがあるからです。