2013年05月30日

固定残業手当を適法に活用して労務リスクを軽減する

~固定残業手当を適法に活用して労務リスクを軽減する~

 中小企業においては、従業員が残業や休日出勤をした分を全部支払っていないという会社も多いのではないでしょうか?最近は、退職した従業員が労基署に未払い残業代を申告するというケースもよくあることです。
時効により最大に2年分遡及して請求できますので、従業員全体ではかなりの金額になるかもしれません。

この場合、会社のリスクを軽減する方法として、「固定残業手当」を導入するという方法があります。
固定残業手当とは、実際の時間外労働等の有無、及び長短にかかわらず、あらかじめ一定時間分の定額の割増賃金を支給する方法です。この方法が適法に運用されるためには、就業規則、賃金規程、労働契約書等において、当該手当が時間外勤務手当相当分であるという定義を明確に定めておくことが必要です。

◆固定残業手当の設定を行う際には、大別すると二通りの方法があります。

①現在の基本給、固定給とは別に一定額を上乗せで固定残業手当として設定する。
 ⇒この方法を選択すると、実際の時間外労働の有無や長短にかかわらず支給するため、会社のコスト増につながる可能性があります。毎月支給している時間外勤務手当相当額で設定するのが妥当です。 

②現在の基本給、固定給から固定残業手当を切り分ける方法
 ⇒労働条件の不利益変更になる可能性もあります。従業員に説明し理解してもらうことが必要です。
 ②の場合、現在支給している手当、例えば営業手当や職務手当を固定残業分とする場合につい
 ても、就業規則、賃金規程、労働契約書等において、「営業手当はそれらの全額につき、時間
 外勤務手当相当分として支給する」等、定義しておく必要があります。

※実際の時間外労働が固定残業手当を超えた場合は、超過分の時間外勤務手当の支払いが必要で
 す。労基署の調査等が入った場合は、差額分の支払いを指導される可能性が高いです。しか
 し、固定残業を設定しておくことで、差額のみの支払いになるため、りすクを軽減できます。


事務所通信2013年2月号より  


2013年05月30日

60歳以降の再雇用後の社会保険料はすぐ下げられる!?

~60歳以降の再雇用後の社会保険料はすぐ下げられる!?~

高年齢者の継続雇用制度を導入している会社は、一般的には定年に達した後、定年時点の給与よりも水準を下げた給与設計を行い、定年を迎えた次の日から継続して再雇用されると思います。
社会保険料について通常の手続きでは、固定給の変更があった場合、変更があった月から3ヶ月経過し、要件を満たすと4ヶ月目から標準月額の改定を行い、実際5ヶ月目の給与から社会保険料が変更になります。
大幅に給与改定をすることが多い高年齢者の再雇用の場合には、上記取扱いですと、給与に比べて4ヶ月間は従業員も会社もかなり高い社会保険料を支払うことになってしまいます。高年齢者の場合の取扱いも同じなのでしょうか。

高年齢者の雇用確保の観点から60歳から64歳までの方は、退職後継続して再雇用された場合、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に決定できる事となっています。
以前は、定年退職→再雇用という場合に限定して社会保険料の改定ができることとなっていましたが、現在は、定年に達する前に退職して継続再雇用される場合や、定年制のない会社で退職後再雇用される場合など、定年退職以外の場合にも拡大し、社会保険料を変更することが可能です。
この取扱いを受けるためには、被保険者資格喪失届と取得届を同時に提出し、保険証の切替を行う必要があります(同日得喪)。また資格取得には再雇用を締結したことがわかる書類、退職した事実を確認できる書類が必要になります。

平成25年4月1日からの高齢者雇用安定法の改正で、事業主が労使協定で定める基準により、継続雇用する対象者を限定できる仕組みが廃止されることに伴い希望者全員の雇用確保が求められ、ますます60歳以上の従業員が増えてきます。そのような中で、再雇用後の手続きもしっかり把握し適正な手続きをとり、会社にとっても負担のないよう対応することも必要になってくるのではないかと思います。

事務所通信2013年1月号より  


2013年05月30日

社会保険の資格取得時の報酬決定で社会保険料削減!?

~社会保険の資格取得時の報酬決定で社会保険料削減!? ~


社会保険の資格取得手続きの際、その従業員の標準報酬月額を届け出て社会保険料が決まりますが、入社時は実績がないため見込みの報酬額により決定されます。その見込みの出し方によっては社会保険料が高くなってしまう可能性もあります。また遡って標準報酬月額の訂正を行う必要も出てきてしまいます。経営者にとっては負担の重い社会保険料を少しでも軽減したいと思うところです。そこで、「資格取得時報酬訂正」を理解することで、多少の社会保険料削減が見込めるかもしれません。ではAさんとBさんのケースで見てみましょう。


AさんとBさんは資格取得時に基本給18万と残業2万円ほどを見込み、決定の標準報酬月額は20万円でした。
その後実際に働いてみると、
Aさん…残業が予想外に多く、実際の残業手当は5万円。 総支給額は230,000円
Bさん…残業が予想外に少なく、実際の残業手当は3千円。総支給額は183,000円

資格取得時に決定された標準報酬月額20万は同じなので、社会保険料は二人とも同じですが、Aさんは実際の給与より低い社会保険料になり、Bさんは実際の給与より高い社会保険料になっています。
この場合「資格取得時報酬訂正」を提出して標準報酬を変更できるのでしょうか。答えはNOです。このケースは残業の見込みが違っていたため起きたことですが、残業の見込み違いについては取得時報酬訂正の対象となりません。資格取得時の報酬訂正を行うのは、固定的賃金や手当の算入漏れ、または明らかな計算誤りがあった場合のみとなり、資格取得時に見込んでいた時間外手当が実際に支払われなかった、あるいは見込み以上に支払われ、著しい差が生じた場合でも、資格取得時の報酬訂正は行いません。

但し、そもそも残業手当を見込まないで届け出てしまい、実際残業があった場合は取得時訂正手続きが必要になります。
残業代の見込みが少ない場合でも訂正の必要がないことから考えると、取得時の残業の見込みは最低限の額を見込んでおけば社会保険料を安く抑えられる可能性があるのではないでしょうか。

尚、次の定時改定には実際支払われた賃金を基に標準報酬が改定されるため、最長、次の定時改定までの期間でのことになりますので大きな負担減は望めないかもしれません。

事務所通信2012年12月号より  


2013年05月30日

本当にあった怖い話 会計検査院の年金事務所調査

~本当にあった怖い話 会計検査院の年金事務所調査~

年金事務所(旧社会保険事務所)の調査にあたったという事業所様は多いと思いますが、会計検査院の調査をご存知でしょうか。
会計検査院とは、役所を調査する役所で、年金事務所の場合、年金事務所が社会保険適用事業所を正しく指導しているか(未加入者などいないか等)を確認するため事業所を調査する機関です。

以前、会計検査院の調査に同席した事があります。調査日に過去2年間分の賃金台帳等の資料を持って年金事務所へ行きました。年金事務所の調査に同席したことはあり、その時は、少し談笑も許される雰囲気でしたが、この調査は全く違いました。緊迫した空気が流れ、余計なことは話せない重たい雰囲気でした。
そのときは、3社が同時に調査を行っており、隣の調査の話が聞こえてきました。未加入者が10人ほど指摘をされており、2年間遡って加入を命ぜられていました。そしてなんとその総額は1,000万円を超える額だという声が!その上、指摘を受けた対象者のうち60歳以上の高齢者がおり、その者の、本来支給されるべきでない特別支給の老齢厚生年金を過去に遡って返還していただくことになるということも言っていました!
年金事務所の調査では、今後の改善を指導されるという形が多く、2年間遡って徴収することはあまりない印象ですが、会計検査院調査は有無を言わさず、その場で書類の提出を求められていたようでした。
非常に厳しい調査だと感じました。
実際に調査を受けてみて、年金事務所の定期調査と違い、容赦なく時効の2年前まで遡る調査であること、もう一つはパート等の未加入者はもちろん、年金を受給している高齢者で未加入者がいる事業所に関しては特に調査対象となり易いのではないかということを感じました。

きちんと基準どおり加入をしておくのが最も良い方法ではありますが、社会保険料は会社にとって重い負担となりますので、労働条件の見直しやシフト制での対応等で合法的に加入しない体制をとっておくよう、今からでも見直しをされておいてはいかがでしょうか。

事務所通信2012年11月号より  


2013年05月30日

残業代払いすぎていませんか?

~残業代払いすぎていませんか?~

所定労働時間は、一般的に日給月給者の残業単価計算において分母で用いることが多くあります。
1ヵ月の所定労働時間は、その会社の労働時間の平均ですが、労働基準法では1週40時間と定められているため、そこから導き出される1ヵ月の所定労働時間は以下になります。
40H×365日÷7日÷12ヶ月≒173.75H

貴社の1ヵ月の所定労働時間は173.75Hと比べて少なく設定されていませんか?
残業単価の比較(基本給20万円の場合)
所定労働時間150Hの場合 20万÷150H×1.25=1,667円×30H=50,010円
所定労働時間173Hの場合 20万÷173H×1.25=1,445円×30H=43,350円
6,660円の差になります。年間ですと79,920円の違いになります。

法定労働時間を最大限に活用するため、所定労働時間を見直し、労働時間を増加させることで残業代を軽減することが可能になります。
しかし、そのままでは1日8時間、週40時間の縛りがあるため、
所定労働時間を173Hにすることはできません。
そこで“変形労働時間制”を使いましょう。
これを採用するとある週は40時間を超えて労働させることができ、逆に夏休みや年末年始など週40時間に満たない週とを全体で均すことができるので、1年間で平均して週40時間にすることが可能です。

変形労働時間制の導入にはさまざまなルールがありますので、もし自社は?と感じた方はお問い合わせください。

事務所通信2012年10月号より