2013年05月30日
Vol.1 退職時に有給休暇を全部消化したいB子編

A社長
「弊社に10年間勤務した従業員B子が退職することになり、残有給40日を全部消化したいと言っているんだが、退職日までに消化させないといけないのか?」
社労士
「基本的にはそうですね。退職時は、年次有給休暇に対して、唯一会社が行使できる権利である“時季変更権”も使えませんので、退職日までに有給を消化してもらうことになりますね。」
A社長
「冗談じゃないよ。40日間も有給を使われたら、業務の引継ぎはいつやるんだ。そんなわがままは許さない!!」
社労士
「確かにそうですね。40日間の有給消化となれば、約2カ月間仕事をせずに会社に在籍することになりますね。その間の会社の社会保険料の負担も大変です。」
A社長
「2カ月間も働かないのに、給料を支払って、社会保険料も負担するなんてとんでもない。何かいい方法はないのかね?」
社労士
「ベストな方法かどうかわかりませんが、有給休暇の買い上げをするというやり方もありますよ。」
A社長
「有給休暇の買い上げは法律で禁止されているんじゃないのかな?」
社労士
「はい、原則は禁止ですが、退職時は例外で、退職によって消滅してしまう有給休暇を買い上げることは禁止されていないんですよ。買い上げる金額は法律で決められていないので、本人と合意できる任意の金額で買い取ることができます。」
A社長
「なるほど、買い上げ額は任意でいいんだね?」
社労士
「通常の有給消化では、有給休暇を取得した場合の金額が法律で決められていますが、退職時の買い上げ制度はそもそも法律に規定がないので、任意の金額で買い上げることができます。」
A社長
「気持ちよく退職して欲しいから、通常の金額で買い上げれば本人も納得するね。引継ぎを優先的に行ってもらうためにも、有給休暇の買い上げはいい方法だね。」
社労士
「この方法は、本人にとってもメリットがあるんですよ。有給消化で退職日が後ろにずれ込まないので、就職活動や失業保険の手続きもすぐできますし、有給休暇の買い上げを特別退職金の名目で行えば、所得税の負担もないため、有給休暇を消化するよりもお得な面もあるんです。」
A社長
「なるほど。早速、今の話をB子にしてみようかな。納得してくれるといいんだが・・・」
社労士
「そうですね。但し、本来、有給休暇は従業員の休息のためにある制度なので、従業員の方に日頃から仕事の妨げにならない程度に、上手く有給休暇を消化してもらうことも必要ですよね。」
A社長
「確かにそうだね。難しいけど努力してみるよ。」