2013年05月30日
Vol.5 従業員がうつ病の診断、休ませた方がよいのか

A社長
「経理のB男の様子が3カ月程前からおかしかったんだが、昨日、病院の診断書を持ってきて、しばらく会社を休ませて欲しいというんだよ。
診断書には、“うつ症状 1カ月程度の療養を要する」”記載されていたんだが、しばらく会社を休ませるべきなのかな?」
社労士
「社長はB男さんのどんなところを様子がおかしい、いつもと違うと感じたのでしょうか?」
A社長
「そうだね。最近、睡眠不足のようで、眠そうにしていたしな。食欲もあまりないみたいで、以前よりかなり痩せたよ。
仕事にもあまり身が入らないようで、これまでにはないようなミスを頻繁にしていたので、先日、注意したところだよ。
ここのところ、遅刻も多かったし、体調不良で欠勤することも何度かあったしな。」
社労士
「そうでしたか。私は専門家ではないので、医学的なことはわかりませんが、医師の診断書で“うつ症状”と診断されていますし、社長のお話を伺う限りでは、メンタルヘルス疾患特有の症状が出ているように感じます。
B男さんにはお休みをして、治療に専念していただく方がよいと思いますが、いかがでしょう?」
A社長
「それは困ったな。経理の仕事は彼に任せきりだったから、長期間休まれると業務に支障が出そうだな。一体、どの程度休みが必要なのかな?
社労士
「病気の程度にもよりますし、個人差もあるため一概には何とも言えませんが、一般的にひとつの目安として3カ月間程度ということが言われています。
無理に出勤して仕事をさせると病状が悪化する可能性もありますので、注意が必要ですね。
B男さんは、現在どのような治療をしているのかなど、詳しい状況はご存じですか?」
A社長
「いやー、わからないな。でも本人に確認をしても要領を得ない場合はどうしたらいいのかな?」
社労士
「貴社の場合、産業医の先生もいらっしゃらないので、B男さんの了承を得て、書面等で主治医の先生に就労の可否や、療養期間の目安等を確認するとよいかもしれないですね。その上で、B男さんに一定期間の休職を命ずることになると思います。」
A社長
「こういったことははじめてのケースなので、どうしたらいいか困ってしまうよ。」
社労士
「会社としては労務管理上どのような対応をしていくかということになると思いますが、先日、貴社の就業規則の見直しをおこなった際に、休職に関する規定をメンタルヘルス疾患に対応できるように詳細に定めましたので、その就業規則に沿って手続きを進めていきましょう。また、必要な書式等は、当方でご用意します。」
2013年05月30日
Vol.4 労働基準監督署の調査が入る?

A社長
「先日、知り合いの経営者の会社に労働基準準監督署の調査が入ったそうだよ。
退職した社員が申告したらしく、遡りで2年分の未払い残業代を払うことになり、他にもいろいろと指導を受けたそうだ。労基署の調査ってどういうものなの?」
社労士
「労基署の調査には大きく分けて“定期調査”と“申告による調査“の2つの種類があります。定期調査は、その年度の労働局の重点施策などに沿って、一定の業種に入ったり、何年も調査に入っていない事業所の中から、ランダムにピックアップして調査に入ることもあるようです。突然、監督官がやってきて“ちょっと製造現場を見せて下さい。“ということもあります。また、申告による調査は、主に従業員の労基署への“タレこみ”に基づく調査です。最も多いのが未払い残業による申告で、労基署も事前に一定の情報を得ているため、その項目について重点的に調査を進めます。今、この従業員の労基署への申告がとても増えています。」
A社長
「調査が入ったらどんなことを調べられるの?」
社労士
「一般的な事例でのお話になりますが、定期調査の場合は、製造業などの業種は、設備等が労働安全衛生法上、問題ないかを確認します。そして、賃金台帳やタイムカードなどから未払い賃金がないか、労働時間の管理を適正に行っているか等を調べられます。また、有給休暇の管理や健康診断を定期的に行っているか、36協定の届出の有無なども調査の対象となります。申告による調査の場合は、かなりピンポイントで申告があった内容について重点的に調査を行います。」
A社長
「具体的にどんな指摘や指導をされるんだろう?」社労士「明らかな法律違反があれば“是正勧告書”、程度に応じ“指導票”などが交付され、改善すべき項目を指摘され、報告を義務付けられます。
その中でも、会社にとっては最も問題になるのが、未払い残業ですが、定期調査では3カ月程度申告による調査では、最大2年分の支払いを行い報告するよう指導を受けることがあります。」
A社長
「うちの会社は、残業は1日2時間までと決めていて、それ以上の残業代は支払っていないよ。
万が一、労基署の調査が入ったら困るね。」
社労士
「今の状況では、法律違反で是正勧告の対象になりそうですね。就業規則や賃金体系の見直しを行う
などして、法律違反にならないよう、労務管理全般を整えていく必要があると思います。」
A社長
「それなら、早急に対応しないといけないね。 また、具体的な相談に乗ってください。」
2013年05月30日
Vol.3 就業規則の試用期間は3カ月間だけれども

A社長
「2ヵ月前にB男を正社員として採用したんだけど、人はわからないものだね。
最初は仕事を頑張ってくれていたんだけど、最近いろいろと問題が発生して困っているんだよ。彼は、全く周りとの協調性がなくて、先輩社員や同僚とトラブルばかり起こしていて、お客さんからのクレームも相次いでいるし、3カ月試用期間中だから辞めてもらおうと思っているんだけど、解雇できるかな?」
社労士
「結論から申し上げると、試用期間中であっても簡単に解雇できるわけではありません。
今回の場合の試用期間は、期間の定めのない契約をした中での、会社が定めた試用期間です。
試用期間中は、解約権留保付労働契約といって、本採用後の通常の解雇より広い範囲で解雇の自由
が認められていますが、解雇するだけの客観的かつ合理的な理由が必要です。
また、労働基準法で定められた試用期間は雇い入れから14日間となっていますので、この期間を
過ぎると、30日前に解雇予告をするか、30日以上分の解雇予告手当を支払うかのいずれかの手
続きを踏まなければなりません。」
A社長
「え~っ!そうなの?試用期間中は、会社に合わなければすぐに辞めてもらえると思ったんだけど
な。簡単にはできないんだね。」
社労士
「そうですね。ところで、B男さんに対しては、実際にトラブルやクレームが発生した時点で、きち
んきちんと注意をされていますか?」
A社長
「もちろんだよ。私からも直接指導しているよ。前に、おたくから教えてもらったように、トラブル
やクレームが起きた都度“始末書“をとり、会社として“指導記録”を書面で残すということもや
ってみたよ。」
社労士
「さすが、社長ですね。それでは、その書面を客観的な証拠として、まずは、本人に“今のままで
は、協調性や仕事への適性がなく、自社に適さないようだが、今後も仕事を続けるかどうか“を、
上手くお話をされたらどうでしょうか?」
A社長
「そうだね。いきなり解雇ではなく、まずは本人としっかりと話をしてみるよ。ところで、他の会社
ではこんな場合どうしているの?」
社労士
「中途採用の場合は、どうしても採用のミスマッチが起こりやすいので、最初から正社員として採用
せずに、一定期間は有期雇用の雇用契約を結んでもらっています。その間に適性を見極め、自社に
適するよい人材ならば、そこから正社員として雇用します。もし、ふさわしくないようなら、その
有期雇用の契約期間満了をもって円満退職となります。次回からこの方法を使ってみて下さい。」
A社長
「今度は採用する前に、相談するようにするよ。」
2013年05月30日
Vol.2 人を採用して助成金を受給するには

社長
「10年間勤務した従業員B子が退職することになり、新しくC子を正社員として
採用し1週間前から働いてもらっているんだよ。助成金というのがあるらしいけ
ど、うちの会社も受給することはできるかな?」
社労士
「今回のC子さんを採用するにあたってはハローワークに求人票を提出していますか?」
A社長
「ハローワークには出していないよ。今回は、求人雑誌で募集をかけただけだよ。」
社労士
「そうでしたか。結論から申し上げると今回は、助成金を受給することはできません。人を雇い入れ
た場合に受給できる助成金は、何種類かありますが、採用にあたっては、原則としてハローワーク
の紹介を受けることが必要です。そのためには、まず求人票をハローワークに提出していることが
条件になります。今回は、求人雑誌で募集し、直接採用したとのことですので、残念ながら助成
金には該当してきません。」
A社長
「え~っ!そうなの?D社で正社員を採用して100万円受給したいう話を聞いたから、うちも
受給できるかと思ったんだけどな。」
社労士
「ちなみに、今回採用したC子さんの年齢は何歳ですか?また、御社に入社する前の職歴はどのよう
になっていますか?」
A社長
「彼女は、現在32歳なんだけど、結婚と出産で前職を退職してから、5年間程働いていなかったよ
うだね。下のお子さんが3歳になったので、保育園に預けて働くことにしたらしい。ブランクはあ
るけど、前職の経験もあるから、しっかり仕事してくれていてとても助かっているよ。」
社労士
「なるほど。今のお話からすると、C子さんはハローワークを経由していれば、「若年者等正規雇用
化特別奨励金」を受給できたかもしれません。この助成金は35歳未満で、直近で1年以上雇用
保険の被保険者資格がなければ対象になります。雇用から6カ月経過後に50万円、その1年後に
25万円、更に1年後に25万円、合計100万円が受給できたかもしれません。」
A社長
「いや~っ、残念だな。ところで、もう一人、現場の若手の社員を採用しようかと思っているんだ
が、今度は助成金がもらえるかな?」
社労士
「今でしたら、3年以内既卒者を対象とした助成金もあります。平成21年以降に大学等や高校を卒
業して以来定職についていない方を採用すると、100万円受給できるものもあります。今度は
ハローワークに求人票を提出してみましょう。」
A社長
「助成金が貰える人だから採用するというのは、順番が逆だけど、たまたま採用したい人材が助成金
を受給できなら、助かるね。今度は、採用予定がある場合は、必ずおたくに事前に相談するよ。」
2013年05月30日
Vol.1 退職時に有給休暇を全部消化したいB子編

A社長
「弊社に10年間勤務した従業員B子が退職することになり、残有給40日を全部消化したいと言っているんだが、退職日までに消化させないといけないのか?」
社労士
「基本的にはそうですね。退職時は、年次有給休暇に対して、唯一会社が行使できる権利である“時季変更権”も使えませんので、退職日までに有給を消化してもらうことになりますね。」
A社長
「冗談じゃないよ。40日間も有給を使われたら、業務の引継ぎはいつやるんだ。そんなわがままは許さない!!」
社労士
「確かにそうですね。40日間の有給消化となれば、約2カ月間仕事をせずに会社に在籍することになりますね。その間の会社の社会保険料の負担も大変です。」
A社長
「2カ月間も働かないのに、給料を支払って、社会保険料も負担するなんてとんでもない。何かいい方法はないのかね?」
社労士
「ベストな方法かどうかわかりませんが、有給休暇の買い上げをするというやり方もありますよ。」
A社長
「有給休暇の買い上げは法律で禁止されているんじゃないのかな?」
社労士
「はい、原則は禁止ですが、退職時は例外で、退職によって消滅してしまう有給休暇を買い上げることは禁止されていないんですよ。買い上げる金額は法律で決められていないので、本人と合意できる任意の金額で買い取ることができます。」
A社長
「なるほど、買い上げ額は任意でいいんだね?」
社労士
「通常の有給消化では、有給休暇を取得した場合の金額が法律で決められていますが、退職時の買い上げ制度はそもそも法律に規定がないので、任意の金額で買い上げることができます。」
A社長
「気持ちよく退職して欲しいから、通常の金額で買い上げれば本人も納得するね。引継ぎを優先的に行ってもらうためにも、有給休暇の買い上げはいい方法だね。」
社労士
「この方法は、本人にとってもメリットがあるんですよ。有給消化で退職日が後ろにずれ込まないので、就職活動や失業保険の手続きもすぐできますし、有給休暇の買い上げを特別退職金の名目で行えば、所得税の負担もないため、有給休暇を消化するよりもお得な面もあるんです。」
A社長
「なるほど。早速、今の話をB子にしてみようかな。納得してくれるといいんだが・・・」
社労士
「そうですね。但し、本来、有給休暇は従業員の休息のためにある制度なので、従業員の方に日頃から仕事の妨げにならない程度に、上手く有給休暇を消化してもらうことも必要ですよね。」
A社長
「確かにそうだね。難しいけど努力してみるよ。」